くらやみがみたしていたせかいのなかに ちいさなひかりがうまれました そのちいさなひかりはやがて おおきなひかりとなりました くらやみのなかに あらわれたひかり それが すべてのはじまりでした くらやみのなかに ながいあいだ ひかりはひとりぼっちでした くらやみはなにもおしえてはくれません ひかりはそのとき 「さみしい」というきもちをおぼえました そこで じぶんじしんをふたつにわけました くらやみのなかに ちいさなひかりがふたつ さいしょにうまれたひかりのなまえは フェーラ・シース つぎにうまれたひかりのなまえは フィリア・ラーラ いつしかふたつのひかりはそれぞれ おとことおんなのすがたになって ふたりはてをとりあいながら くらやみのなかをとんだのでした 「とびつづけているだけではつかれてしまうから どこか やすむことのできるばしょをつくろう」 そしてふたりはちからをあわせ ちいさなせかいをつくりました そのせかいは まさしくらくえんのようでした みどりがあふれ きぎはゆたかなみをむすび うつくしいはながさきみだれていました さまざまなけもの さまざまないきものが いきることのよろこびをうたいました ……ところが さまざまないきもののなかにただひとり ゆたかなちえをもつみにくいこびとがおりました そのみにくいすがたから ほかのけものやいきものたちにきらわれていたこびとは いつもひとりぼっちでした 「どうして ぼくはこんなにもみにくいのだろう」 「どうして ぼくはみんなからあいされていないのだろう」 「どうして?」 どうして もっとうつくしいすがたでぼくをうんでくれなかったのだろう? みにくいこびとは じぶんをうんだフィリア・ラーラをにくみました にくむこころは いつしか ちいさなつるぎとなっていました あいをしらないみにくいこびとは てにしたひとふりのちいさなつるぎで フィリア・ラーラのからだをつらぬいたのです ……らくえんにみちあふれていたうたが とぎれました フィリア・ラーラは そのみにいだいていたひかりをうしないました ひかりがなければ フェーラ・シースのそばにいることはできません ひかりをうしなったフィリア・ラーラは きんいろのりゅうにすがたをかえて フェーラ・シースのもとからさっていきました そうして もうじぶんにはとどかないばしょにあるひかりをみあげながら しずかなるうみによこたわり ひかりのかわりにだいちをだいて さめることのないねむりについたのでした こうして このせかい フィルタリアは「りゅうがねむるだいち」とよばれるようになったのです フィリア・ラーラがさっていき フェーラ・シースはかなしみました かなしくて かなしくて たくさんのなみだをながしたのでした そのなみだはフィリア・ラーラのもとへとふりそそぎ しずかなるうみをみたしていきました フェーラ・シースのみぎのひとみからさいごにこぼれたなみだは そうぞうのちからを ひだりのひとみからさいごにこぼれたなみだは はかいのちからをもっていました どちらも フェーラ・シースがもっていたちからです そうぞうと はかい ルヌラストとキルーサとなづけられたふたりは ねむりについたフィリア・ラーラのもとへとむかいました ルヌラストがつくりだしたせかいを キルーサがはかいする キルーサがはかいしたせかいを ルヌラストはつくりだす フェーラ・シースはただそれを てんにかがやくひかりとなってみまもっているのです ふたりはたがいにせかいをつくり こわし そうしてながいながいときがながれました えいえんにくりかえされる そうぞうとはかいのものがたり そのたえることのないものがたりは いまもつづいているのです 『せかいのはじまりのおはなし』 Estelle・E・Fhiliarne
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