お伽話の王子さまは、どんなアイスクリームを食べたのかしら?










ねえ、あなたはその味を想像したことがある?










綿菓子よりも甘いのかしら。それとも、ケーキに載った苺のようにすっぱいのかしら。
辛かったり苦かったりなんてことはないわね。
だってアイスクリームというのは舌がとろけてしまいそうなくらい美味しいものなのでしょう?

王子さまはそんなアイスクリームを食べた時、どんな顔をしていたのかしら。
お姫さまも見たことのないような嬉しそうな顔だったら大変よ!
お姫さまが怒ってお城を出ていってしまうから。

でも、そのほうがお話としては楽しいのかしら?

出ていってしまったお姫さまを探しに、王子さまも旅に出るの。
手がかりはお姫さまが残していった、お姫さまの足にぴったりのサイズのお花のついた靴。
ガラスの靴は落として割ってしまったら大変でしょう?
だからこのお話には、かぼちゃの馬車もガラスの靴も、
毒入りりんごだって出てきたりやしないわ。

話がだいぶ脇の道に転がってしまったけれど、靴よりも重要なのは、街の人の噂話。
でもどれが本当でどれが嘘なのか、王子さまはすぐにはわからないの。

素直な王子さまは噂話に振り回されて、街中を駆け回る羽目になってしまって…

そうしてくたくたになってお城に戻ってきた王子さまは、
さっき食べたアイスクリームの甘い匂いに気づくのだわ。
その匂いを追い掛けていったら、お姫さまのお部屋の前につくの。
「なあんだ、お姫さまは帰ってきていたんだね」




王子さまは安心して、お姫さまの部屋の扉を開けたの。




そこにいたのは……











『王子さまが嬉しそうに食べていた』アイスクリームになってしまったお姫さま







そんなホラーなオチは必要ないに決まってるでしょう。わたしだってそんなのいやよ。







そこには、王子さまが食べたのと同じ、だけど真ん中にミントの葉っぱを飾った
アイスクリームを食べているお姫さまがいたの。
「おかえりなさい、王子さま。早く食べないと、とけてしまいますわ」
お姫さまは今までに王子さまに見せたことのないような、とっても嬉しそうな顔をして笑ったの。
王子さまはやきもちをやくどころか、
そのお姫さまの大層可愛らしい笑顔にめろめろになってしまったんですって。





つまりは、美味しいものは食べなくちゃ損。っていう話よね?





めでたしめでたし。